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馬券でベンツGクラスを目指す忘備録

[日本ダービー2021]サトノレイナスで勝負したくなる話

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「はっきり言って、2歳のラインアップの中で、牡馬も合わせて間違いなくナンバーワンです」っと、デビュー前から名物オーナー里見治氏の期待を一身に背負っていたサトノレイナス。この馬は、オーナーの色眼鏡を通してだけではなくノーザンFでの評判も高く、里見オーナーの所有馬を見ている元社台ファーム場長の池田充氏も、既に2歳の牝馬チャンピオンになるポテンシャルを秘めていると太鼓判を押していました。


満を持して迎えたデビュー戦は、2020年6月7日の東京1600m新馬戦です。スローペースを中段に付けて外々を回り直線へ、他馬に寄られ外に逃げる臆病な面を見せながらも、稍重の馬場を上がり最速34.1秒で差し切りました。たいしたライバルもいない中での辛勝となり、この時点では里見オーナーの評価は過大で、ダービー挑戦の噂すらも聞こえない時期でした。ただ、仕上がりが7,8分であったことや、幼さを露呈している段階だったので、今後の調教次第では化けるかもしれない末脚を見せてはくれました。

  • ルメールJ「能力はありそうだけど、物見をしていたようにまだ子供。まっすぐに走っていればもっと楽勝できた」
  • 国枝師①「まだ(調教で)追っていなかったからね。仕上がりとしては7、8分。まずは勝ててよかった」
  • 国枝師②「スローペースでもしっかり折り合ったけど、追われてふらついたり心身にまだ幼さを見せた。勝ったから良しとしたいけど、そのあたりが変わればパフォーマンスも上がってくると思うんだけどね」

次戦に選んだのは、2020年10月4日のサフラン賞(1勝クラス)、舞台は中山1600mです。国枝師の見立てでは、(サトノレイナスは)跳びの大きい馬なので大箱で距離が長いコースの方が適正が高いとして、マイルを走る事には早くも難色を示していました。一方で、鈴木勝美助手の視点では、放馬を挟んだ上積みと折り合いに心配がないことなどから、ポテンシャルで勝ち切ると楽観的でした。

  • 鈴木助手「確かに初戦もアッサリ勝てれば良かったけど、放牧を挟んで当時より芯が入ったし、前向きな一方で我慢すべきところは我慢できている。この時季にあまり張り切りすぎても良くないけど、ポンポンと行ってくれなきゃ困る器。まだ上のギアがあるはずだし、2戦目で変わってくれるんじゃないのかな」

スタートは出遅れながらも、ミドルペースで進む道中を後方で折り合いに専念してレースを運びました。4角でルメールJの好騎乗で馬群を華麗にさばいてやや外に出すと、目を見張る豪脚を披露して連勝を飾りました。やや時計の掛かる良馬場で上がりタイムは2位に1.0秒差をつける最速の34.0秒を計測しています。このレースは、次戦でアルテミスSの3着に入るテンハッピーローズを相手にしており、決して低いレベルでもありませんでした。

  • ルメールJ「2回目の競馬でテンションが上がっていて、ゲートの中で怒っていました。それでスタートが遅れてしまいました。しかし、後ろからリラックスして運べたことで息が入って、直線で良い脚を使えました」
  • 国枝師「新馬戦はフラフラしていたけど、今日は真っすぐ走っていた。牝馬だけに兄より“おませ”で、学習能力が高い」

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そして、2020年12月13日の阪神JFは初めての重賞挑戦となりました。しかし、国枝師はやはりマイルへの距離適正を疑問視ししており、今後のことも見据えて、距離を伸ばし牡馬と対戦する経験を積むために東スポ杯に使いたかった思惑があったそうですが、里見オーナー初の牝馬G1獲りの意向を汲んで阪神JFを選択しました。この頃から既に国枝師は、素質の高さからサトノレイナスで牡馬クラシックに挑戦する気持ちがありました。そうであれば、ダノンザキッドやタイトルホルダーというダービーでも人気を集める有力馬と、一戦を交えていればかなりの経験値となっていたはずです。

  • 国枝師「個人的には(800メートルの)東スポ杯を使いたかったんだ。馬の格好を見ると2000メートルは欲しいからね。ただ、オーナー(サトミホースカンパニー)が牝馬のGⅠをまだ勝っていないこともあって、まずはここへ向かうことに。牡馬と一緒の路線に行きたい気持ちもあったんだけどね」

このレースでは、白毛のアイドルホース・ソダシを前に惜敗を喫します。中段で運び、最後はソダシを目標に内から脚を伸ばし、一時は先頭に立つもソダシに押し返されてハナ差の2着に沈みました。特に大きな不利はなかったものの、初めて外からではなく馬群を割いて内から上がりを使う展開で、上がりタイムはこの馬にしては物足りない4位の33.9秒でした。初めての関西輸送や、ミドルペースを'この馬にとっては)やや前目に付けたことが原因かもしれません。

  • ルメ―ルJ「すごくいい競馬をしてくれました。エンジンのかかりが遅かったけど、ラストはいい伸びを見せて頑張ってくれた。勝ち馬の後ろで競馬ができたけど、直線で忙しくなって離されてしまいました。それでも最後は詰めてきました。来年、パワーアップしてくれれば」
  • ルメールJ②「すごくいい競馬をしてくれたけど、まだ背中が柔らかい。エンジンのかかり、反応が遅かった。勝ち馬の後ろでマークできていたけど、直線で忙しくなった」

いよいよ、サトノレイナスは牝馬クラシック三冠の序章『桜花賞』に進みます。ソダシと同様に阪神JFからのぶっつけ本番のローテーションで臨みますが、陣営としては前走戦を挟みたい希望がありましたが、輸送や間隔と状態を考えて叶いませんでした。休み明けで走らない馬ではないですが、叩き2走目でどれだけ変わり身を見せるのか、こういったデータを取れなかったことも少し厳しい状況に追いやられている要因なのかもしれません。

  • 国枝師「もともとは(2月の)東京開催のレースを使う予定でいました。でも、(調整過程で)そこには間に合わないとなって、気のいいタイプだし、相手も牝馬で、コース経験もあるので、『ぶっつけ本番で』という選択をしました。GIIチューリップ賞とかステップレースは他にもありますが、(桜花賞までの)間隔や輸送のことも考えると、実際のところ、使うレースは限られてしまうんですよね。これがもし、距離を延ばして(GI皐月賞で)牡馬を相手にするとなれば、また別の話になったのでしょうが。それはともかく、桜花賞に臨むにあたって、レイナスの仕上がり自体はすごくいい感じでいきましたよ」

ルメールJも厳しかったと振り返ったように大外枠を引いてしまい、ゲートも上手くないので必然的に後方に追いやられ、直線も進路を探して外に流れ1着ソダシに比べて距離ロスが多い中で、唯一の上がり32秒台を出してハナ差の2着に飛び込みました。またもソダシに連敗してしまってはいますが、内容的には勝ちに等しい競馬をしており、国枝氏が何度も述べるように、サトノレイナスにとってマイルはやはり忙しい距離と納得が出来るレースでした。

  • ルメ―ルJ「18番は厳しかったかもしれません。とても馬はいい競馬をしてくれました。でも仕方ありません。オークスで巻き返したいですね」
  • 国枝師「ルメさんも話していましたが、内枠なら阪神JFの時のようにインに潜り込んで、ということもできたんでしょうが、外枠(8枠18番)でしたからね。加えて、ちょっとエンジンがかかるのが遅かったので、あんな競馬になっちゃった、という感じ。レイナスの走りを見れば、もうちょっと距離があれば......というのは感じますから。(マイル戦に)より適性の高い馬に完璧な競馬をされてしまうと、さすがに厳しいですよね」

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そして、東京2400mと距離が延びるオークスでは、ついにソダシを逆転するかと期待が高まる中で、陣営が選択したのは日本ダービーでした。国枝氏は、サトノレイナスは昨年に弥生賞を勝ちクラシック挑戦した全兄のサトノフラッグよりも、早い段階で能力は上回っていると見測っていました。そこで斤量差もつくのであれば、十分に勝ち負けが出来ると判断しました。ルメールJに打診したところ騎乗を快諾されたことが後押しとなり、里見オーナーの承諾も無事に取れて、晴れて牝馬のダービー挑戦に進むことになりました。

  • 国枝師①「全兄のサトノフラッグも昨年、GII弥生賞を勝ってクラシックに向かいましたが、同馬と比べても『レイナスのほうが能力は上だな』と早い段階から思っていました。そこで、ダービーも含めて、クラシック登録はしておいたんです。(牡馬と)同斤量だったら、ちょっと考えるところもあったけれど、牝馬で2kg差もらえるなら、チャンスがあるかな、と」
  • 国枝師②「そこで、ルメさんにも相談して『どうだ?』と聞いたら、『(ダービーに)行くなら乗りたい』と。それが、一番の決め手になりましたね。」

国枝厩舎からは過去に7頭がダービーに挑戦しましたが、その馬たちと比べてもサトノレイナスの実力は上位と、国枝氏は自信を持っています。特に2020年のダービーで4人気に支持されたサトノフラッグを定規に、より強いと自信を持てたのが大きいのではないでしょうか。同厩舎の三冠馬アーモンドアイやアパパネと比較しても遜色ないレベルで、馬体のつくりが似ながらも手脚が長くフレームがゆったりしており、距離適性はより高いと見ています。早くからポストアーモンドアイを担う国枝厩舎の至極の一頭として、関係者の夢が詰まった素質馬が、日本一栄誉のある舞台に挑みます。

  • 国枝師「個人的な手応えは、それらと比較しても『(サトノレイナスのほうが)上かな』と思っています。あと、これまでにダービーに出走した馬は、ちょっとまだ成長が遅かったかな。サトノフラッグや姉のバラダガールと比べても、レイナスが一番早い段階から動けていました。気持ちも、身体も、兄姉の中で抜けてよかったよね。前向きでもあるし、そういう意味でも"ダービーへの適性"は高いと思います。この時期に、牝馬が牡馬相手に2400mを走るというのも、以前なら『厳しいかな』という考えがありました。でも、近年の"強い牝馬"を見ていると、今の段階でもある程度やれる馬であれば、勝負になる気がしています」

ここまで牝馬で牡馬のクラシックに挑戦することに拘る国枝氏に対して、やはり自身の引退が近い中でダービーを未制覇なことや、昨年に引退したアーモンドアイをダービーに出走できなかったことの心残りからくるエゴなのではないかと、疑問の言葉が投げかけられる中で、やはり自信の無い勝負はしないという勝負のプロの志向を見受けることができました。そもそもこの挑戦は思い付きではなくて、デビュー以来里見オーナーに繰り返し打診してきた積み重ねが実を結んだ結果として成り立ったという経緯がありました。

  • 国枝師①「うん、まあねぇ......(苦笑)。調教師に限らず、競馬関係者にとってダービーというのは、ひとつの夢であり、目標でありますよね。チャンスのある馬がいれば、『狙いたい』と思うのは当然のこと。アーモンドアイは牝馬三冠を目指す流れになりましたけど、現実に(ダービーに)出ていたら『面白かっただろうな』というのはあります。確かに(自らの)定年も近いのでね(笑)。だからといって、(ダービー制覇を果たしていないことに)焦りはなく、なんでもかんでもダービー出走、とは思っていません。でも、能力のある馬であれば、牡牝関係なく、(ダービー制覇を)狙いにいきたいなという気持ちはあります」
  • 国枝師②「桜花賞が終わってから。オーナーに『(ダービーに)行きたいです』と言ったら、『調教師さんと(ルメール)騎手がいいと言うのであれば、いいですよ。お任せします』と言ってもらえた。よかったなと。ゴーサインを出してもらったのだから、あとは責任を果たさないと、と思ったよ。」
  • 里見オーナー①「正直言って、私はオークスでもいいと思っていたけど、もともと国枝調教師はダービーに行かせたいという思いがあったらしく、皐月賞、ダービー、菊花賞とエントリーしてあった。それはもうダービーを勝てれば、こんな名誉なことはない。懸けてみようと」
  • 里見オーナー②「正直、調教師から進言された時は少し驚きました。まだ重賞も勝っていないので…。ただ、デビュー当初から、レイナスは距離適性も考えて牡馬路線を歩ませたいとの意向がありましたので、その後のレースを見て考えようと思いました。阪神JF、桜花賞ではソダシに勝てないまでも凄い脚を使ってくれたのでダービー出走を決断しました。勝算はあると思っています。5年前のサトノダイヤモンドの悔しさを晴らせればと願っています」

サトノレイナスのダービー挑戦は、ほぼ負けが許されない状況とも言えます。「なぜ、オークスを走らなかった」、仮に好走が出来なかったとしたら競馬界から嘲笑や批難の的となることでしょう。そんなリスクを見据えても、伯楽・国枝栄調教師が魂の勝負を仕掛けたいとすれば、そこには見えてること以上の勝算が隠されていると願いたいです。

 

新馬戦から繰り返しマイルを使われ、善戦はするものの強敵を相手に惜敗が続いています。国枝氏はレースの度に「マイルは短い」と口を開き、大きな箱で長い距離を走って欲しいと訴えてきました。そしてついに、サトノレイナスのポテンシャルを発揮する最高の舞台が整いました。皐月賞では後続を3馬身突き放した怪物エフフォーリアの存在、ダービーは追い込み場の成績が振るわない傾向、栄冠の前に難しい課題はありますが、斤量2kg差を追い風にした、渾身の末脚一閃が勝利に届くと期待したいです。

 

最後に、ルメールJが自信を持っている時は強いです。一週前のオークスでは、直前の発汗で様子が疑われたアカイトリノムスメを2着に持ってきました。ダービーでは、グレートマジシャンやアドマイヤハダルなど、他馬に乗る選択肢もある中で、国枝師の依頼に対して即答でサトノレイナスを選びました。2017年には引退が近い藤沢和雄調教師にレイデオロでダービー勝利をプレゼントし、今回は国枝師に同様に勝利を捧げたいと意気込んでいます。

  • ルメールJ①「初めてダービーの話を聞いた時は“楽しみ!ビッグチャンス!”と思った。ダービーを勝つのはスーパー牝馬だけ。ウオッカはめちゃくちゃ強かったけど、レイナスもまだフルポテンシャルを見せていない。2400メートルならこれまでとは違う馬になる。絶対に大きなレースを勝てる」
  • ルメールJ②「桜花賞を使ってスイッチオンしましたね。能力が高いから勝つ自信はあります。メンバーは強いけど、牝馬は2キロ軽いからね」

 

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